サラサラヘアから見える世界

平日13時からTBSラジオでやっているキラキラpodcastで、町山智浩のコラムを聞き、とても気になったドキュメンタリー。

町山さんの解説を元に内容を切り取った。(すべてがネタバレ。だけど、今は日本公開していないです。)

ある日、クリス・ロックというアメリカのコメディアンは娘に「パパ、どうして私はグッド・ヘアーではないの?私の髪の毛はこんなチリチリじゃない。自分の髪の毛は何かおかしいのではないか」と言われた。

彼女がそういった理由はテレビや雑誌を見ると黒人女性は皆、サラサラロングヘアーの人ばかりだからだ。確かに、テレビを見るとビヨンセやハル・ベリー、ナオミ・キャンベル、ミシェル・オバマまでもがサラサラヘアだ。結構、見慣れている。

だから、彼の娘も自分の髪の毛をおかしいのではないか、と思ったのだ。

そこでクリス・ロックは自分が子供の頃はマイケル・ジャクソンなどもアフロヘアだったことを思い出し、なぜ現在黒人女性たちのサラサラヘアが目立つのかを調査を始めることにした。

その結果、まず彼女たちは“クリーム・クラック”というストレートパーマ剤を使っていることが分かった。これは水酸化ナトリウムであり、それを髪の毛につけてストレートにしているのだ。

これを作っているのは黒人が経営している企業で、この企業の経営者はストレートパーマ剤だけで億万長者になっている。

実際、ヘアケア産業は数十億ドルの巨大産業である。またアメリカに占める黒人の割合はわずか12%でしかないにもかかわらず、アメリカ全体のヘアケア産業にお金を使う8割は黒人が占めているのだ。このように多くのお金が落ちている市場に白人大手企業も参入し始めている。

話は少し飛んだが、この“クリーム・クラック”、はすごいニオイがするため大丈夫なのか、と疑問を持った彼はある実験をしてみた。

実験は至って簡単。骨付きの鶏肉をパーマ剤に入れるだけ。するとみるみるうち溶けてしまうのだ。ましてやコカ・コーラを缶ごと入れると、そのアルミ缶自体までも溶けてしまう!

こんなことを日常的に繰り返していれば、頭皮がやられてしまうではないか。

ましてや、これを多くの女の子は3歳ぐらいからやっているのだ。実に早すぎる。そんなことを繰り返すため50歳くらいでハゲてしまうのだ。

上述のようにストレートパーマ剤だけで大きな産業になり、それを続けている人々に与える体の影響の凄さに驚いてしまう。

また、サラサラヘアを維持するにはストレートパーマ剤だけでは済まないことが分かった。

かなりの部分が“ウィーブ”というものである。これはエクステのように髪の毛につけ毛をするものであるが、髪の毛の根元からつなぐものである。地毛は全部隠すことになる。つまりは“繋いだカツラ”である。

これはものすごい手間のかかるもので、付けるだけで5時間以上かかるのだ。そして費用もものすごい。10万から15万円もするのだ。それにしばらくすると痛んでくるので定期的に付け替えなくてはならない。その費用だけでも5・6万円もかかる。

つまり月に15万から20万円もかかるのだ。こんな家賃よりも高いものを誰でもできるわけではない。

ではお金の無い人達はどうしているのだろうか。それは生活保護で得たお金で髪の毛を買っているのだ。

これほどまでに黒人女性のサラサラヘアは浸透しているのだ。彼女たちはカーリーヘアではどこか気持ちが悪いし、やらなくてはならないと捉えられているのだ。

そんなことでいいのか。

アイスティーという黒人ラッパーはインタビューでウィーブを着けている女性への嫌悪感を示している。それはベッドで女性の髪を指でなでるとき、手に結び目がひっかかるし、高価なウィーブを着けている女性は「さわらないで!」とまで言うからだ。これじゃ気分も盛り上がらない。

こういったように黒人男性の多くはサラサラヘアを好んでいないようだ。

つまり、男性が白人やアジア人のようにサラサラヘアにして欲しいと言っているのではなく、女性自身がやりたがっているのだ。

ではこの付け毛は何処から来ているのだろうか。

アメリカには黒人の多くが住む地域にはウィーブショップという、髪の毛を売る店がある。その店は多くが中国人や韓国人が経営する店だ。彼らはそれをインド人の買付け業者から買っていると言う。

クリスはそのインド人業者に同行し、インドまで行くことになる。

インドのキルパティと言う土地の寺院では毎年1,000人以上の女性が訪れ、信仰の証として髪の毛を捧げるのだ。ここでは長く、たくさん髪の毛を奉納すればするほど、ご利益があるとされているのだ。そして、奉納された元値はタダの髪の毛をその寺院は売っていたのだ。

ではいくらくらいで髪の毛は売られるのだろうか。

インド人の業者は旅行カバンいっぱいに髪の毛を詰めて、それを韓国や中国系の人に売る。Sの金額、カバンいっぱいで150万円。ムチャクチャ儲かっているではないか。

元値はタダ。それを寺院は安く業者に売り、その業者はメチャクチャ高い金額で売りつける。これはひどすぎるのではないか。

ここでの問題は、黒人の人々が一生懸命働いても、そのお金はみんな他の人種に流れてしまうことだ。

黒人たちは何をやっているのか。そうクリスは思い、とても残念な気持ちになった。

昔、ブラックパンサーという黒人過激派団体がオークランドにはあった。

彼らは“Black is beautiful.”と、アフロヘアは恥ずかしくないと言い、アフロヘアを流行らした。そこでは黒人であることは恥ずかしくない、アフロというものは我々に誇りであるとして始めたことが、また元の以前の悲観的な考えに戻ってしまったのだ。

これは黒人が東洋人のサラサラヘアを真似するということにより、産業的には搾取されていることに繋がっているのだ。

これが暴かれたと言うことが、実に興味深いのだ。